「広告コピーをAIに作らせたら、似たような言い回しばかり返ってきた」という相談が増えています。原因の多くは、AIへの指示に訴求軸を含めていないことです。広告コピーの訴求軸とは、何を軸に商品の良さを伝えるかという切り口で、機能訴求・感情訴求・比較訴求の3つに大別できます。本記事では、この3つの訴求軸をAIへの指示にどう落とし込むかを、Google広告の公式仕様と景品表示法の観点を踏まえて整理します。

*検証環境:Google広告ヘルプ日本語版・Meta Newsroom・消費者庁公式サイトの本文直接確認/2026-08-08確認*

01結論:広告コピーのAI生成は、3つの訴求軸を先に決めてから指示します

広告コピーをAIに作らせるときにばらつきが失われる主因は、訴求軸を指示に含めていないことです。訴求軸を先に決めてから指示すると、AIが出す広告コピーの案が訴求ごとに整理され、後工程の確認もしやすくなります。訴求軸を決めずに案数だけを増やしても、似た言い回しが重複するだけで、テスト設計上の意味を持ちません。

Google広告のP-MAXキャンペーンには「テキストのカスタマイズ」という設定があります。これは、ランディングページの内容と生成AI技術を組み合わせ、広告見出しや説明文を自動生成する仕組みです(出典: Google広告ヘルプ)。この仕組みは既定で有効になっていますが、訴求軸そのものは自動で判別しません。広告コピーの狙いをどこに置くかは、指示側で明確にする必要があります。

広告コピーの訴求軸は、大きく次の3つに分けられます。

訴求軸何を軸に伝えるかAIへ渡す代表的な材料
機能訴求仕様・数値・機能の違い重量・速度・価格など単位付きの数値、技術的な差分
感情訴求使ったときの気持ち・体験想定読者が置かれた状況、感じてほしい感情語彙
比較訴求市場平均・従来手法との違い自社の実測値、公開されている調査結果(競合名は含めない)
広告コピーの3つの訴求軸と、AIへの指示に含めるべき材料 広告コピーの3つの訴求軸(機能訴求・感情訴求・比較訴求)を横に並べたカード図。機能訴求のカードは緑で、AIへ渡す材料として重量・速度・価格など単位付きの数値と技術的な差分を示す。感情訴求のカードは黄土色で、想定読者の状況と感じてほしい感情語彙を示す。比較訴求のカードは焦茶色で、自社の実測値と公開されている調査結果を示し、競合名は含めない旨を注記する。下部に、訴求軸を先に決めてから指示すると案が訴求ごとに整理されるという結論を置く。 AD CREATIVE 広告コピーの3つの訴求軸と、AIへ渡す材料 機能訴求 仕様・数値の違いを伝える AIへ渡す材料 ・重量/速度/価格の数値 ・技術的な差分 ・実測値か公称値かの別 感情訴求 使ったときの気持ちを伝える AIへ渡す材料 ・読者の今の状況 ・感じてほしい感情語彙 ・避けたい煽り表現 比較訴求 市場平均との違いを伝える AIへ渡す材料 ・自社の実測値 ・公開されている調査結果 ※競合名は含めない 訴求軸を先に決めてから指示すると、案が訴求ごとに整理される
広告コピーの3つの訴求軸(機能訴求・感情訴求・比較訴求)と、それぞれAIへ渡すべき材料

次の見出しから、訴求軸ごとに何をAIへ渡すべきかを具体的に見ていきます。

02機能訴求の広告コピーは、数値と仕様を先にAIへ渡します

機能訴求は、商品・サービスの仕様や数値の違いを軸に良さを伝える訴求です。AIに機能訴求の広告コピーを作らせるときは、抽象的な特徴ではなく、数値と仕様をそのまま渡すことが有効です。

たとえば「軽い」ではなく重量をグラム単位で示す、「速い」ではなく処理時間を秒単位で示す、のように単位付きの数値を指示に含めます。Google広告のP-MAXキャンペーンでは、テキストアセットの文字数と推奨する用意数が仕様として定められています(出典: Google広告ヘルプ)。

アセット種類文字数の目安推奨する用意数
広告見出し全角15文字以内(うち1つ以上は全角7文字以内)11本以上(最小3本・最大15本)
長い広告見出し全角15〜45文字2本以上(最小1本・最大5本)
説明文全角45文字以内4本以上(最小2本・最大5本)

文字数の制約が厳しいため、数値は指示の段階で削ぎ落とさず、AIに複数の入れ方を試させる方が効率的です。機能訴求の指示に含めるとよい要素は次のとおりです。

  • 具体的な数値(重量・速度・容量・価格など単位付き)
  • 競合と比較したときの技術的な差分
  • 導入や設定にかかる手間の差
  • 保証・サポート内容の違い

数値をAIに渡すときの注意点は、実測値か公称値かを明示することです。公称値をそのまま実測値のように書かせると、事実と異なる印象を与えるおそれがあります。

03感情訴求の広告コピーは、想定読者の感情語彙を渡します

感情訴求は、使ったときの気持ちや体験を軸に良さを伝える訴求です。機能訴求と違い、数値だけでは案が硬くなりすぎるため、AIには想定読者の感情語彙を先に渡します。

感情訴求の指示には、次のような要素を含めます。

  • 想定読者が今困っている具体的な状況
  • 使用後にどう感じてほしいか(安心・高揚・達成感など)
  • 避けたい感情表現(過度な煽り・不安を煽る言い回し)
  • ブランドのトーン(カジュアル・フォーマルなど)

感情訴求は、機能訴求より効果を断定する表現が混ざりやすい領域です。「使えば必ず変わる」のような言い切りは、実測が伴わない限り避ける必要があります。AIへの指示に断定表現を使わないという制約を含めておくと、後工程の確認負担が減ります。

04比較訴求は競合名を出さずに優位性を伝える設計にします

比較訴求は、市場平均や従来の方法との違いを軸に良さを伝える訴求です。景品表示法第5条は、競争事業者との比較そのものを禁止していませんが、比較広告が不当表示にならないための3つの要件を消費者庁が示しています(出典: 消費者庁)。

3つの要件は、比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること、実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、比較の方法が公正であることです。AIに比較訴求のコピーを作らせるときは、この3要件を満たせる材料(自社の実測値や公開されている調査結果)だけを渡し、材料が無い比較は指示に含めません。

比較訴求のコピーは、競合名を明示せずに「従来の方法」「一般的な相場」のような表現に置き換える設計が安全です。特定の競合サービス名を出す比較は、法務確認を挟んでから使う判断にしてください。

AIに比較訴求を作らせるときにありがちな失敗は、材料が無いまま「業界最安」「圧倒的に優位」のような結論だけを渡してしまうことです。AIは渡された結論をもっともらしい言い回しに整形しますが、実証や引用の正確さまでは補ってくれません。比較訴求の指示には、結論ではなく根拠となる数値そのものを渡す設計にしてください。

05広告コピーの指示(プロンプト)に、訴求軸と禁止表現を同時に書き込みます

訴求軸を決めたら、AIへの指示(プロンプト)にその軸と禁止表現を同時に書き込みます。訴求軸だけを伝えて禁止表現を省略すると、後工程の確認で差し戻しが増えます。

指示の型の一例です。

役割:D2Cコスメブランドの広告担当者
訴求軸:機能訴求(成分の違いを軸にする)
渡す材料:成分名、含有率、公式の効果効能の範囲内で言える表現
制約:
- 効果を断定する言い回し(絶対に・必ず・誰でも)は使わない
- 競合名を出さない
- 比較する場合は自社の実測値のみを使う
出力形式:1案1行。訴求軸ごとに5案。想定読者を一言添える。
広告コピー生成プロンプトの要素分解|訴求軸→渡す材料→制約→出力形式 広告コピーをAIへ指示するプロンプトを4つの要素に分解し、左から右へ矢印でつなぐフロー図。1番目は訴求軸を1つに絞ること、2番目はその訴求軸に応じた材料を渡すこと、3番目は断定表現や競合名の扱いなど制約を書くこと、4番目は案数や想定読者を示す出力形式を指定することを示す。4つを分けて書くことで、AIが出した案を訴求ごとに仕分けしやすくなるという結論を下部に置く。 AD CREATIVE プロンプトを4要素に分けて書く ①訴求軸 機能・感情・比較 の1つに絞る ②渡す材料 数値・感情語彙・ 実測値のいずれか ③制約 断定表現の禁止・ 競合名の扱い ④出力形式 案数・想定読者 を明記する 4要素を分けて書くと、AIの案を訴求ごとに 仕分けしやすくなる 訴求軸だけを伝え制約を省くと、後工程の差し戻しが増える
広告コピー生成プロンプトの要素分解|訴求軸→渡す材料→制約→出力形式の順で書く

この型のポイントは、訴求軸・渡す材料・制約・出力形式を分けて書くことです。訴求軸だけを伝えると、AIは案を大量に出せても、後から訴求ごとに仕分ける手間が発生します。

06GoogleとMetaの広告コピー生成機能は、どこまで自動化されているか

Google広告のテキストのカスタマイズは、日本語のランディングページでも既定で動いています。一方で、プロンプトを入力して見出し・説明文を追加生成する機能には、利用できる広告主の条件があります。条件の1つが、Google広告の管理画面の表示言語です(出典: Google広告ヘルプ)。対象は英語・オランダ語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語の7言語で、2026年8月時点で日本語は含まれていません。

つまり、ランディングページの内容から自動生成される見出し・説明文は、日本語アカウントでも機能します。一方で、プロンプトを打って狙った訴求のコピーを追加生成する機能は、管理画面の言語設定によっては表示されない場合があります。自社アカウントで使えるかどうかは、実際の管理画面で確認してください。

Metaについては、広告クリエイティブ全体でAIに任せる範囲と人が守る範囲を『AIで作る広告クリエイティブ、任せる範囲と守る範囲の線引き』で整理しています。同記事が扱うMeta GEMモデルへの投資(出典: Meta Newsroom・2026年1月28日発表)は配信の最適化を担う仕組みで、広告コピーそのものを生成する機能とは別軸です。

07生成AIが出した広告コピーは、優良誤認・有利誤認の観点で人が確認します

広告コピーをAIに作らせた後は、優良誤認・有利誤認に照らして人が確認する工程を欠かさず挟みます。景品表示法第5条第1号の優良誤認は、実際より著しく優良だと示す表示を禁止しています(出典: 消費者庁)。

有利誤認(第5条第2号)は、価格や取引条件を実際より有利だと誤認させる表示です。消費者庁は、故意でなく誤って表示した場合でも規制の対象になると明記しています(出典: 消費者庁)。AIが生成した表現が結果的に誇大でも、過失を理由に免れるわけではありません。

次の表は、実際には使ってはいけないNG例です。訴求軸ごとにどこで誇張が混ざりやすいかを示す例であり、広告への使用を意図したものではありません。

訴求軸NG例(実際の広告には使用不可)何が問題か
機能訴求「業界最速の処理速度」(根拠併記なし)実証できる根拠が無いまま優位性を主張している
感情訴求「使えば絶対に人生が変わる」効果を断定し優良誤認のおそれがある
比較訴求「他社製品より圧倒的に高性能」(競合名を明示)比較の3要件(客観的実証等)を満たさない可能性がある
生成AIの広告コピーを配信するまでの確認フロー 生成AIが出した広告コピーを配信するまでの確認フローを示す図。訴求ごとの案出しのあと、優良誤認・有利誤認チェックを行う。そのあと比較訴求を含むかどうかで分岐し、含む場合は比較の3要件(客観的実証・正確な引用・公正な比較方法)をチェックしてから配信へ進み、含まない場合は追加チェックなしで配信へ進む。どちらの経路も最終的に配信という同じ箱に収束することを示す。 AD CREATIVE 生成AIの広告コピーを配信するまでの確認フロー ①案出し 訴求ごとに AIが案を出す ②優良誤認・ 有利誤認チェック 人が確認する ③比較訴求を含む 比較の3要件を チェックする ③比較訴求を含まない 追加チェックは 不要 ④配信 2経路とも ここへ収束 優良誤認・有利誤認チェックは、比較訴求の有無にかかわらず必須
生成AIの広告コピーを配信するまでの確認フロー|比較訴求を含む場合は3要件チェックを追加

生成AIが出した広告コピーの確認は、次の観点で行います。

  • 効果・実績を事実以上に強めていないか
  • 価格・条件面で実際より有利だと誤認させる表現がないか
  • 比較を含む場合、3要件(客観的実証・正確な引用・公正な比較方法)を満たすか
  • 生成AIサービスの利用規約上、当該コピーを広告に使ってよいか

08広告コピーでAIを使うときつまずきやすい点

広告コピーの生成にAIを組み込むときに見落としやすい点を紹介します。

  • 訴求軸を指定せず「10案ください」とだけ指示し、似た言い回しばかり返ってくる
  • 機能訴求のつもりで数値を渡さず、AIが抽象的な言い回しで埋めてしまう
  • 比較訴求で競合名を伏せずにAIへ渡してしまい、そのまま案に出てくる
  • 優良誤認・有利誤認の確認なしに、AIが出した案をそのまま配信してしまう
  • プロンプトの禁止表現を一度決めたきり更新せず、規制の変更に追随できない

こうしたつまずきの多くは、訴求軸と禁止表現を指示の時点で分けて書いていないことが原因です。指示のテンプレート化は『広告表現の法規制まとめ|薬機法・景表法・ステマ規制の境界』で扱う規制の境界線と合わせて運用すると、確認の手戻りを減らせます。

もう1つ見落としやすいのが、媒体ごとの仕様差です。Google広告のP-MAXとMetaの広告では、見出し・説明文の文字数上限も生成AI機能の利用条件も異なります。1つの訴求軸で作った広告コピーを複数媒体へ横展開するときは、媒体ごとの文字数仕様に合わせて再確認する工程を挟んでください。

09広告コピーAI設計チェックリスト

  • 広告コピーの指示に、機能訴求・感情訴求・比較訴求のいずれかを明記した
  • 機能訴求では、抽象的な特徴ではなく単位付きの数値をAIへ渡した
  • 感情訴求では、想定読者の状況と避けたい感情表現をAIへ渡した
  • 比較訴求では、比較の3要件を満たせる材料だけを渡し、競合名を明示していない
  • プロンプトに訴求軸・渡す材料・制約・出力形式を分けて書いた
  • AIが出した広告コピーを、優良誤認・有利誤認の観点で人が確認した
  • 利用しているGoogle広告アカウントで、プロンプト生成機能が使えるか管理画面で確認した

10FAQ

広告コピーをAIに作らせるとき、訴求軸はいくつ指定すればいいですか

1回の指示につき1つの訴求軸に絞ることをおすすめします。複数の訴求軸を同時に指示すると、AIが出す案が訴求ごとに整理されず、後工程の仕分けに手間がかかります。

広告コピーの機能訴求で、数値が無い商品の場合はどうすればいいですか

数値化できる要素を探すところから始めます。導入までの日数、対応時間、サポート回数など、価格や性能以外にも単位付きで示せる要素があれば機能訴求に使えます。

広告コピーの比較訴求で、競合名を出してもよい場合はありますか

一律のNGではありませんが、比較の3要件(客観的実証・正確な引用・公正な比較方法)を満たす必要があり、法務確認を挟んでから使う判断が安全です。

Google広告のテキストのカスタマイズは、日本語アカウントでも使えますか

はい。ランディングページの内容から見出し・説明文を自動生成する「テキストのカスタマイズ」は既定で有効になっており、日本語のページでも動作します。

広告コピーの生成AI機能で、プロンプトを打って追加生成できないのはなぜですか

Google広告の生成AIでアセットグループを作成するには、利用要件があります。管理画面の表示言語が、英語・オランダ語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語の7言語のいずれかである必要があります。日本語アカウントでは、この機能が対象外になる場合があります。

広告コピーの感情訴求は、機能訴求より優良誤認のリスクが高いですか

訴求の種類そのものにリスクの優劣はありません。ただし感情訴求は数値による裏付けが少なくなりやすく、効果を断定する言い回しが紛れ込みやすいため、確認をより丁寧に行う必要があります。

広告コピーの指示をテンプレート化すれば、確認工程は省略できますか

省略はできません。テンプレート化は指示のばらつきを減らす手段であり、AIが出した案の確認そのものを代替する仕組みではありません。訴求軸ごとの確認観点は、テンプレートを使った場合でも毎回人が見る必要があります。