「記事を書いて」という1行の指示では、AIは工程ごとに何を確認すべきかを知りません。調査・構成設計・執筆・図解指示・ファクトチェックという5つの工程には、それぞれ別の指示が必要です。本誌は自分自身をAIで制作しているメディアであり、この5工程を実際に回した中で見つかった問題を、プロンプト設計の教訓として持っています。
検証環境:Google Search Central 公式ドキュメント(生成AIコンテンツガイダンス/AI最適化ガイド等)/2026-08-08時点の掲載内容で確認
01結論:プロンプト設計は「何を書くか」より「何を確認させるか」で決まる
AIで記事を作るときのプロンプト設計は、書いてほしい内容を細かく指定することではありません。各工程でAIに何を確認させ、確認できなかったときにどう振る舞わせるかを設計することです。
『AIで記事を作る工程設計|構成から入稿までの分業表』では、構成・執筆・図解・ファクトチェック・入稿ゲートという5工程の分業表を示しました。本記事では、その工程ごとに実際どんな文言をプロンプトへ入れているかを、本誌自身の制作記録に基づいて具体的に示します。
GoogleはAIによる概要への表示について、追加の要件も特別な最適化も不要だと説明しています(出典: Google Search Central・2025-12-31更新)。プロンプト設計でも、AI検索向けの裏技を盛り込むのではなく、通常の品質基準を工程ごとに徹底させることが遠回りに見えて確実です。
02なぜプロンプト設計は工程ごとに変える必要があるのか
工程ごとにプロンプトを変える理由は単純です。工程ごとにAIが確認すべき対象が違うからです。調査工程が確認すべきは情報源の一次性であり、執筆工程が確認すべきは出典の対応関係であり、図解工程が確認すべきは機械検査の死角です。1つの万能プロンプトでは、この違いを吸収できません。
姉妹誌AIO Journalは2026-07-28時点で251本を公開しています(sitemap.xml実測)。本数が増えるほど、プロンプトの文言があいまいなまま量産すると、同じ種類の誤りが繰り返し発生します。
Googleは生成AIツールによる大量のページ作成について明言しています(出典: Google Search Central・2025-12-31更新)。ユーザーへの価値を伴わない場合、大量生成されたコンテンツの不正使用に関するスパムポリシーに違反しうるとしています。検索品質評価者向けガイドラインには、大量生成コンテンツの不正使用(4.6.5節)と、ほとんど価値を付加しないメインコンテンツ(4.6.6節)の評価方法が記載されています。量産の工程そのものにプロンプトで確認点を組み込む理由は、この評価軸を意識した設計だからです。
Googleはさらに、独自の視点があるコンテンツと既存情報の要約を区別しています(出典: Google Search Central・2026-07-14更新)。既存コンテンツの要約は、すでに他の場所で手に入る情報を言い換えたにすぎないとされています。プロンプト設計の目的は、この「要約止まり」をAI自身に気づかせ、一次情報や自社実測へ踏み込ませることにあります。
5工程それぞれで確認させる対象と、その指定の裏づけになった教訓を一覧にすると次のとおりです。
| 工程 | AIに確認させること | 指定の裏づけ |
|---|---|---|
| 調査 | 一次情報の原文をそのまま持ち帰らせる | Google公式ガイダンス(独自の視点の要件) |
| 構成設計 | 着手前に対象ファイルの重複を確認させる | 本誌の二重投稿事例(実測) |
| 執筆 | 数値の直後に出典を書かせる | 本誌の機械検査基準(check_sources.py) |
| 図解指示 | 機械検査が見ない座標の重なりを明示させる | 本誌の図解重なり事例(実測) |
| ファクトチェック | 原文を直接引用させ、二次要約に頼らせない | 本誌のクリック数/クリック率の誤読事例(実測) |
03調査工程のプロンプト設計|一次情報のURLと原文を持ち帰らせる
調査工程のプロンプトで指定すべきは、検索結果の要約をそのまま持ち帰らせないことです。二次情報の解説記事だけで済ませると、記事全体が「言い換え」になってしまいます。
役割:AI MARKETING JOURNAL編集部の調査担当
指示:次のテーマについて、プラットフォーム公式ブログ・公式ヘルプ・公式ドキュメントから一次情報を探してください。
テーマ:(記事テーマを入力)
出力形式:情報源ごとに「URL・更新日または発表日・該当箇所の原文(英語ならそのまま)・日本語要約」を1件1行で出す。
制約:二次情報(業界メディアの解説記事・まとめサイト)しか見つからない場合は、その旨を明記し、
一次情報が見つかったことにしない。「該当箇所の原文をそのまま出す」という指定が要です。要約だけを持ち帰らせると、後工程のファクトチェックで原文に戻る手間が発生します。原文を最初から確保しておけば、この手戻りを防げます。
この指定を入れていない場合、調査担当のAIは検索結果の要約や、他サイトの解説記事の言い回しをそのまま持ち帰りがちです。要約は便利ですが、要約する人の解釈が一度挟まっています。原文をセットで持ち帰らせておけば、後工程の担当が解釈のズレに気づきやすくなります。
04構成設計工程のプロンプト設計|見出しを立てる前に事実の有無と重複を確認させる
構成設計工程で最初に確認させるべきは、見出しの中身ではありません。着手する記事IDが既に別の担当によって進行中でないかどうかです。
本誌の制作では、同一の記事IDが2つの担当へ同時に投入された事例がありました。後発の担当は、着手前に対象ファイルが既に存在することに気づきました。上書きせず既存ドラフトを点検する対応に切り替えたため、実害はありませんでした(実測: 2026-08-08、git履歴で確認)。この対応ができたのは、着手前確認をプロンプトに明示していたからです。
役割:AI MARKETING JOURNAL編集部のディレクター
指示:着手前に、対象の記事ID(AIMJ-xxxx)のファイルが02_記事/配下に既に存在しないか確認してください。
存在する場合は新規に書き始めず、既存ファイルの状態(下書き・完成・検査待ち)を報告してください。
続けて、記事マップCSVの該当行(category・type・target_kw・diagrams)に沿ってH2見出し案を作成してください。
出力形式:H2見出し案(4〜7本)+各見出しの根拠(一次情報のURL、または実測予定である旨)。
事実を確認できていない見出しは、確認できるまで立てず保留と明記する。05執筆工程のプロンプト設計|数値の直後に出典を書かせる
執筆工程のプロンプトには、本誌固有の機械検査の基準をそのまま書き写します。基準を後から人が当てはめるのではなく、執筆時点でAI自身に満たさせる設計です。
役割:AI MARKETING JOURNAL編集部の執筆担当
指示:以下の構成案に沿って本文を執筆してください。
制約:
1) 数値を書く場合は、同じ文または同じH2見出し内に出典(外部リンク、または「実測」+日付)を必ず置く
2) 引用ブロック(> ...)の中に数値を書く場合も、通常の段落と同じく出典を置く
3) 一次情報で確認できない主張は断定せず「公式には記載がない(本日時点で確認)」と書く
4) 1文は90字以内、1段落は4文以内とする
5) 禁止語(絶対・100%・必ず・最強・誰でも・業界No.1・保証)を使わない制約2は、本誌固有の事情から加えたものです。引用ブロックはかつて描画されない不具合があり、出典検査の対象からも除外されていました。修正後は通常の段落と同じく検査対象になったため、プロンプト側の指示もこれに合わせています。
Google公式のSEOスターターガイドがあります(出典: Google Search Central・2025-12-18更新)。同ガイドは、興味深く有益なサイトの条件として、文章の読みやすさ・独自性・最新性・信頼性を挙げています。執筆工程のプロンプトにこの条件を書き写しておくと、AIが下書きを作る段階から品質基準を意識できます。基準を後工程の検査だけに頼ると、差し戻しの回数が増えます。
06図解指示工程のプロンプト設計|機械検査が見ない項目を人の目視に渡す
図解指示工程では、機械検査が「見ていない項目」をプロンプトで明示することが要です。機械検査を通過したことと、実際に読みやすいことは別の話だからです。
本誌の機械検査(verify_diagrams.py)は、最小フォントサイズ・文字行数・図形数・縦横比を検査します。しかし、図形どうしの座標が重なっているかは検査していません(コード内コメントで確認・2026-08-08)。実際に機械検査を通過した図解2枚で、画像化して目視した際に図形とラベルの重なりが見つかり、座標を修正した記録があります(実測: 2026-08-08、git履歴で確認)。
役割:AI MARKETING JOURNAL編集部の図解担当
指示:次の本文セクションを1枚のSVG図解にしてください。
制約:要素数28〜32個を目安にする。最小フォントサイズ14px以上にする。role="img"とtitle・descを付ける。
確認事項:機械検査(verify_diagrams.py)はフォントサイズ・文字行数・図形数・縦横比しか見ず、
図形どうしの座標が重なっているかは検査しない。完成後にPNG化して目視し、重なりの有無を報告すること。
対象セクション:(本文セクションを貼り付け)07ファクトチェック工程のプロンプト設計|原文を引用させ、二次要約に頼らせない
ファクトチェック工程で最も重要な指定は、執筆者が要約したブリーフや下書きの表現を、そのまま正しいと信じさせないことです。
本誌の制作では、執筆ブリーフがMeta公式発表の内容を「クリック率(CTR)+3.5%」と伝えたことがありました。しかし原文によると「a 3.5% lift in ad clicks」です(出典: Meta Newsroom・2026年1月28日発表)。つまりクリック数の増加であり、クリック率(CTR)ではありませんでした。この違いは、原文を直接確認した担当が見つけました。
役割:AI MARKETING JOURNAL編集部の原典照合担当
指示:この記事本文中の数値主張をすべて洗い出し、frontmatterのprimary_sourcesに列挙されたURLを
実際に開いて原文と突合してください。
制約:
1) 原文が英語の場合は、該当箇所を原文のまま引用したうえで日本語訳を添える。
ブリーフや下書きの要約表現だけを根拠に一致と判定しない
2) 指標の種類(率か件数か、クリック数かクリック率か等)が原文と本文で一致しているかを個別に確認する
出力形式:数値主張ごとに「本文の記述/原文の該当箇所/一致・不一致・要修正」の一覧表「率か件数か」という確認事項は、抽象的な注意書きではありません。クリック数とクリック率は、表示回数が変われば動き方が変わる別の指標であり、混同すると読者に誤った情報を伝えます。プロンプトに具体的な確認軸を書くことで、原文照合の精度が上がります。
この確認事項を入れていなければ、原文を開いても「だいたい合っている」で済ませてしまう恐れがあります。指標の種類・期間・母集団という3点を個別に照合させる指定にしておくと、AIの原典照合が形だけの作業で終わりません。
原文照合そのものの実施手順は、次の2ステップに分けられます。
primary_sourcesに列挙された各URLを実際に開き、本文の数値主張に対応する英語原文の該当箇所をそのまま貼り付ける(入力:primary_sourcesのURL、確認方法:該当英文をコピーできたかどうか)- 原文の指標の種類(率か件数か等)と単位を本文の記述と1つずつ突き合わせ、一致・不一致・要修正のいずれかに分類する(入力:手順1の原文と本文の数値主張、確認方法:判定結果を一覧表に記入できているか)
08プロンプト設計でつまずきやすい点
5つのプロンプトに共通して入れている要素を整理すると、次の4つに集約されます。
| 要素 | 何を書くか | 省略した場合に起きること |
|---|---|---|
| 役割 | 誰の立場・どの担当として作業するか | 判断基準があいまいになる |
| 制約 | 数値・出典・文長など機械検査の基準 | 検査で差し戻されてから初めて気づく |
| 確認事項 | 工程特有の死角(重複・原文・座標等) | 過去と同じ種類の誤りを繰り返す |
| 出力形式 | 後工程が扱いやすい形式 | 人手での整形作業が増える |
工程ごとにプロンプトを分けても、運用が甘いと本来の効果が出ません。本誌が実際に注意している点は次のとおりです。
- 調査工程のプロンプトが「情報を集めて」とだけ指定し、一次情報と二次情報の区別を求めない
- 構成設計工程で着手前の重複確認を省略し、同じ記事IDへ複数の担当が同時着手する
- 執筆工程のプロンプトに機械検査の基準を書き写さず、検査で差し戻されてから初めて気づく
- 図解指示工程で「見やすく」とだけ指定し、機械検査の死角(座標の重なり)を明示しない
- ファクトチェック工程で執筆者のブリーフを鵜呑みにし、原文まで戻って確認する指示を入れない
これらはどれも、指示を1行足すだけで防げるつまずきです。差し戻しが起きたら、原因の工程を特定し、その工程のプロンプトへ確認事項を1つ足す運用を続けてください。
09プロンプト設計チェックリスト
- 調査工程のプロンプトに「一次情報の原文をそのまま持ち帰る」指定を入れた
- 構成設計工程のプロンプトに「着手前に対象ファイルの存在を確認する」指定を入れた
- 執筆工程のプロンプトに、数値と出典の対応関係の基準をそのまま書き写した
- 執筆工程のプロンプトに、引用ブロック内の数値にも出典が必要な旨を入れた
- 図解指示工程のプロンプトに、機械検査が検査しない項目(座標の重なり等)を明示した
- ファクトチェック工程のプロンプトに、原文の直接引用を要求する指定を入れた
- ファクトチェック工程のプロンプトに、指標の種類(率か件数か等)を個別確認させる指定を入れた
- 各工程のプロンプトが、確認できなかった場合の振る舞い(保留・断定しない等)を明示している
10FAQ
AIで記事を作るプロンプトは1本にまとめた方が効率的ではないですか
まとめない方が実務的です。工程ごとにAIが確認すべき対象が異なるため、1本の万能プロンプトでは各工程特有の確認漏れを防げません。工程を分けたプロンプトのほうが、後から特定の工程だけを改善しやすいという利点もあります。
プロンプト設計の効果はどうやって確認すればよいですか
差し戻しの理由を記録することです。機械検査や独立ファクトチェックで差し戻された理由が同じパターンで繰り返されていれば、該当工程のプロンプトに確認事項を1行追加します。本記事で示した5つのプロンプトも、実際の差し戻し理由を踏まえて更新した内容です。
図解指示のプロンプトはどこまで具体的に書くべきですか
要素数やフォントサイズなどの数値基準に加えて、機械検査が検査しない項目を明示してください。基準を満たすことと、実際に読みやすいことは別問題です。人の目視確認を前提にした指示を添えることで、機械検査だけでは防げない不具合を減らせます。
ファクトチェック工程のプロンプトで最も重要な指定は何ですか
原文の直接引用を要求する指定です。執筆者のブリーフや下書きの要約表現だけを根拠に一致と判定すると、原文の意味が変わって伝わっていた場合に気づけません。原文に戻って確認する動作をプロンプトで強制することが実務上の近道です。
プロンプト設計は記事の量産スピードを落としませんか
工程を分ける分、最初の設計には時間がかかります。ただしGoogleは、価値を伴わない大量生成をスパムポリシー違反になりうるとしています。差し戻しの繰り返しを防げる分、量産全体で見ると手戻りは減ります。
5つのプロンプトは他の記事制作にもそのまま流用できますか
役割や対象テーマの部分だけを差し替えれば、他メディアの記事制作にも応用できます。ただし「機械検査の基準を書き写す」という部分は、自分の制作環境が実際に検査している項目に合わせて書き換えてください。他所の基準をそのまま持ち込んでも、検証していない項目には意味がありません。