AI検索で自社が言及されても、そのクリックはSearch Consoleの通常のレポートには現れません。ただし数週間後に、指名検索(ブランド名や商品名そのものでの検索)が増えていることに気づく場合があります。この記事では、指名検索の増減を手がかりにAI検索経由の間接効果を推測する方法と、その限界を整理します。

検証環境:Google Search Console・Google Analyticsヘルプ公式ページ本文 / 2026-08-07確認

この記事で分かることは次の3点です。

  • AI検索経由の効果がSearch ConsoleやGA4で直接測れない理由
  • 指名検索の増減を近似的に観察する、クエリフィルタの具体的な設定手順
  • 相関を因果と取り違えないために確認すべき交絡要因

01結論:AI検索経由の間接効果は直接測れない。指名検索の増減から推測する

本誌の結論は明確です。AI検索での言及が事業成果にどれだけ貢献したかを、公式ツールだけで直接計測する方法は今のところありません。Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートに含まれる指標はインプレッション数のみで、クリック数は含まれません(出典: 生成AIパフォーマンスレポート)。

GA4にも2026年5月13日付で「AI Assistant」チャネルが追加されました(出典: What's new in Google Analytics)。ただしGoogleのAI Overviews・AIモード経由の流入は、このチャネルの対象外です。この2つは引き続きOrganic Searchに分類されます(出典: デフォルトチャネルグループの定義)。

だからこそ本誌が勧めるのは、直接効果ではなく間接効果を「推測」する方法です。AI検索での言及後に指名検索が増えていれば、AI経由で認知した人が後から検索した可能性を疑う材料になります。ただしこれは相関の観察にすぎず、因果の証明ではありません。増加の原因は広告やPRなど他にも考えられるため、断定は避けてください。

SEO計測全体の指標設計は『AI検索時代のSEO計測|指標をどう組み替えるか』で扱っています。本記事はそのうち指名検索という1つの指標を掘り下げます。

直接計測できる範囲と推測に頼る範囲の境界図 AI検索経由の間接効果について、Search Console・GA4・外部調査で直接確認できる範囲と、指名検索の増減という間接的な手がかりでしか近づけない範囲を、中央の境界線で分けて示した図。左側は外部調査のCTR実測値・GSC通常レポートのクリック数・GA4のAI Assistantチャネルを直接計測できる範囲として示し、右側はAI検索での言及・指名検索の増減・事業成果への貢献度を相関でしか読み解けない範囲として示している。 直接計測できる範囲と推測に頼る範囲 境界より右は、相関の観察でしか近づけない 直接計測できる範囲 推測に頼るしかない範囲(相関のみ) ここから先は 相関のみ 外部調査のCTR実測値 Ahrefs・Pewの公開データ GSC通常レポートのクリック数 自社サイトの実測値 GA4のAI Assistantチャネル 外部AI経由の流入のみ対象 AI検索での言及 内容も回数も直接は見えない 指名検索の増減 クエリフィルタで自社が観察 事業成果への貢献度 因果としては証明できない 指名検索の増減は、直接計測ではなく相関の手がかりです
直接計測できる範囲と推測に頼る範囲の境界図|Search Console・GA4・外部調査で直接確認できる指標と、指名検索の増減という間接的な手がかりに頼るしかない領域を分けて示す

02なぜAI検索経由の効果を直接計測できないのか|GSCとGA4が測れる範囲

直接計測できない理由は、AI検索の応答内で調べものが完結し、計測ツールに情報が届かなくなるためです。外部調査で規模感を確認します。Ahrefsの調査では、対象キーワード30万件をGoogle Search Consoleのデータで集計しています(出典: Ahrefs・2024年3月と2025年3月の比較)。内訳はAI Overview表示ありが15万件、非表示が15万件です。

情報検索意図キーワードの順位1位CTRは、5.6%から3.1%へ低下しました。AI Overview表示キーワードに限ると7.3%から2.6%まで下がり、予測値比で34.5%の低下です。この数値はAhrefs社の集計であり、自社の実測値ではありません。

Pew Research Centerも米国成人900人を対象に実測調査を行いました(出典: Pew Research Center・2025年3月の検索ログ)。AI要約が表示された検索でリンクをクリックした割合は8%、非表示の検索では15%でした。米国のパネル調査のため、日本市場にそのまま当てはめることはできません。

CTR低下の内訳は『AI OverviewsでCTRはどれだけ落ちるか、4つの一次データ』で詳しく扱っています。本記事で押さえておきたいのは、AI検索内で調べものが完結する比率が増えるほど、従来のクリック計測では効果を捉えにくくなるという前提です。

指標通常の検索パフォーマンスレポート生成AIパフォーマンスレポート
インプレッション数(表示回数)○ 含まれる○ 含まれる
クリック数○ 含まれる× 含まれない
CTR(クリック率)○ 算出可能× 算出不可
対象範囲通常の検索結果全体AI OverviewsとAIモードのみ

生成AIパフォーマンスレポート自体も、一部のサイト所有者から段階的にリリースされている機能です(出典: 生成AIパフォーマンスレポート)。自社のSearch Consoleにまだ表示されていない場合は、ロールアウト待ちの可能性があります。

03指名検索とは何か|Search Consoleに専用の抽出機能はない

指名検索とは、企業名・サービス名・商品名など、指名性の高い語での検索を指します。Search Console公式ヘルプに、この「指名検索」を専用に抽出する機能の記載はありません(出典: 検索パフォーマンス レポート)。あるのはクエリごとにデータをまとめるクエリディメンションと、クエリを絞り込むフィルタ機能です。

クエリフィルタには「次を含むクエリ」「次を含まないクエリ」「カスタム(正規表現・RE2構文)」の3種類があります(出典: 高度なフィルタリングと比較)。指名検索を近似的に取り出すには、この3種類のうち「含む」または「カスタム(正規表現)」を、ブランド名の表記ゆれに合わせて自社で組み合わせる必要があります。専用ボタン1つで抽出できる機能ではありません。

フィルタ種類できること指名検索での使い方
次を含むクエリ指定した文字列を含むクエリだけ表示するブランド名1語だけを含める場合
次を含まないクエリ指定した文字列を除外する紛れ込む一般語を弾く場合
カスタム(正規表現)RE2構文で複数条件を組み合わせるローマ字・カタカナ等の表記ゆれをまとめて拾う場合

「WEBMARKS」というブランド名を例にすると、ローマ字表記とカタカナ表記の両方を1つの正規表現でまとめて拾えます。実際の設定は次の見出しで手順化します。

本誌の考え方はシンプルです。指名検索は、テレビCMや展示会などオフライン施策の効果測定でも古くから使われてきた発想です。AI検索の間接効果を見るときも、同じ発想を転用しているだけだと捉えてください。

04指名検索データの抽出手順|クエリフィルタの設定から集計まで

Search Consoleでの操作は次の6ステップです。

  1. 対象プロパティを開き、左メニューの「検索結果」を選ぶ
  2. 上部の「+新規」から「クエリ」を選び、「カスタム(正規表現)」を指定する
  3. 自社のブランド名・商品名の表記ゆれをまとめた正規表現を入力する(例は下記コード)
  4. 日付範囲を指定し、期間を変えて同じフィルタで複数回確認する
  5. 表示されたクエリ一覧の合計クリック数・表示回数をCSVでエクスポートする
  6. 前の期間と比較し、指名検索クエリの合計値がどう変化したかを記録する
  7. 想定と違うクエリが混ざっていないか目視で確認し、フィルタを調整する
# 例:Search Console「検索結果」→クエリを追加→「カスタム(正規表現)」
# ブランド名の表記ゆれ(ローマ字・カタカナ・スペースの有無)をまとめて拾う書き方
webmarks|ウェブマークス|web ?marks

正規表現の書き方にも注意点があります。「|」はOR条件を表します。「web ?marks」の「?」は、直前の空白があってもなくても一致させる書き方です。半角・全角、大文字・小文字の表記ゆれも洗い出してから正規表現に反映してください。

Search Consoleに「指名検索抽出」という名前の公式機能はありません。この手順は、本誌がクエリフィルタを応用して組んだ設定例です(出典: 検索パフォーマンス レポート)。ブランド名が一般語と重なる場合の調整は、後述の「使えないケース」で説明します。

指名検索抽出の手順フロー Search Consoleで指名検索を近似的に抽出する手順を5段階の流れで示した図。検索結果を開く、クエリにカスタム正規表現フィルタを追加する、期間を変えて複数回確認する、CSVで集計する、前の期間と比較するという順で進み、最後に指名検索抽出は公式機能ではなくクエリフィルタの応用である旨を注記している。 指名検索抽出の手順フロー クエリフィルタの設定から集計・比較まで ① 検索結果を開く 対象プロパティを選択 左メニューから遷移 ② クエリを追加 カスタム(正規表現) ブランド名の表記ゆれを入力 ③ 期間を変えて確認 同じフィルタで複数回 単月の変動を除く ④ CSVで集計 クリック数・表示回数を エクスポートする ⑤ 前期間と比較 合計値の変化を記録 交絡要因の確認へ 指名検索抽出は公式機能ではなく、クエリフィルタの応用です
指名検索抽出の手順フロー|Search Consoleでクエリフィルタを設定し、期間を変えて再確認し、CSVで集計するまでの流れを示す

05指名検索の増減を相関として読み解くときの5つの確認事項

AI検索での言及から指名検索の増加までは、即座ではなくタイムラグを伴うことがあります。回答をその場で行動に移さず、後日思い出して検索するユーザーがいるためです。言及があった時期だけでなく、その後数週間分もあわせて確認してください。

指名検索が増えていても、それだけでAI検索の効果とは言い切れません。判断の前に、次の5つを確認してください。

  • 同時期に広告出稿(リスティング・SNS広告等)を増減させていないか
  • プレスリリースやメディア掲載など、PR活動のタイミングと重なっていないか
  • 前年同月比で見ても、季節性による変動ではないか
  • 競合の指名検索も同時に伸びていないか(業界全体が話題になっている可能性)
  • テレビ・展示会・セミナーなど、オフラインの露出がなかったか

広告出稿の有無は、Google広告の管理画面で対象期間の指名キーワードへの出稿実績を確認できます。プレスリリースの有無は自社の配信履歴で確認します。季節性は前年同月の指名検索件数と比較すれば判断できます。競合の動向は、公開されている検索トレンドツールで指名語の推移を横並びに見る方法があります。

これらを1つずつ消していっても、AI検索の影響だと証明することはできません。消せない要因が少ないほど、AI検索を含む間接効果があった「可能性が高まる」という言い方にとどめてください。

指名検索の増減に影響する交絡要因マップ 中央の指名検索の増減という結果に対し、AI検索での言及は推測対象の1つに過ぎず、広告出稿・PRやプレスリリース・季節性・競合動向・オフライン露出という5つの交絡要因も同時に影響しうることを、中央のボックスと周囲6つのボックスを線で結んで示した図。 指名検索の増減に影響する交絡要因マップ 「増えた」原因は1つではない 推測対象(AI検索での言及) 交絡要因(コントロールしにくい外部要因) AI検索での言及 推測対象(本記事のテーマ) 広告出稿 PR・プレスリリース 指名検索の増減 Search Consoleで観察する結果 季節性 競合動向 オフライン露出 全要因を消せない限り、AI検索の効果と断定はできません
指名検索の増減に影響する交絡要因マップ|AI検索での言及は推測対象の1つに過ぎず、広告出稿・PR・季節性・競合動向・オフライン露出という他の要因も同時に指名検索へ影響することを示す

06指名検索が手がかりとして使えないケース

指名検索という手法には限界もあります。ブランド名が一般語と重なる場合、正規表現を工夫してもノイズを完全には除けません。地名や業種名と同じ社名では、無関係な検索まで拾ってしまいます。

検索ボリュームが極端に小さいブランドでも、変化を正確には読み取れません。月間の指名検索が数件程度では、通常の変動と区別がつかないためです。こうしたケースでは、指名検索の増減だけに頼らず、GA4のAI Assistantチャネルなど別の指標と組み合わせて判断してください。

ブランド名が一般語と重なる場合の対処法もあります。社名単体ではなく、社名と業種語・商品名を組み合わせた正規表現に切り替える方法です。たとえば「(社名).*(サービス名)」のように、2語が近接して出現するクエリに絞り込みます。それでも完全には切り分けられないため、最終的には抽出したクエリ一覧を目視で確認する作業を併用してください。

07指名検索の増減を読むときにつまずきやすい点

よくある誤解正しい理解
指名検索が増えた=AI検索の効果だと断定する相関の観察であり、広告・PR等の交絡要因を消してから判断する
Search Consoleに「指名検索抽出」ボタンがあると思い込む専用機能はなく、クエリフィルタを自社で組む運用
GA4のAI Assistantチャネルを見ればAI Overviews経由の流入も分かると考えるGoogleのAI Overviews・AIモード経由はOrganic Searchに残る
1回の期間比較だけで結論を出す複数期間・前年同月比で継続して観察する

共通する原因は、「増えた」という結果だけを見て、比較対象や交絡要因の確認を省略することです。指名検索は便利な手がかりですが、単独では因果を語れない指標だと意識してください。GA4側の分類の穴は『GA4のAI Assistantチャネル新設、見落としやすい分類の穴』で詳しく扱っています。

指名検索の確認は、単発のタスクではなく定点観測の運用にしてください。四半期ごとにクエリフィルタを見直し、新しい商品名やキャンペーン名が増えていないかを確認すると、抽出漏れを防げます。フィルタを固定したまま放置すると、新ブランドの指名検索を取りこぼします。

08指名検索分析チェックリスト

  • 自社のブランド名・商品名の表記ゆれ(ローマ字・カタカナ・スペース有無)を洗い出した
  • Search Consoleでカスタム(正規表現)フィルタを設定し、指名検索クエリを抽出した
  • 複数の期間で同じフィルタを適用し、単月の変動ではないか確認した
  • 同時期の広告出稿・PR活動の有無を照合した
  • 前年同月比で季節性の影響を確認した
  • 競合の指名検索の動きも合わせて確認した
  • Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートでインプレッション数の推移も併せて見た
  • 「AI検索の効果があった可能性」という表現にとどめ、断定を避けた

09FAQ

指名検索とは何ですか

企業名・サービス名・商品名など、指名性の高い語での検索を指します。Search Console公式に専用の抽出機能はなく、クエリフィルタを自社で組み合わせて近似的に取り出します(出典: 検索パフォーマンス レポート)。

AI検索経由の効果は直接計測できますか

できません。生成AIパフォーマンスレポートにはインプレッション数のみが含まれ、クリック数は含まれません(出典: 生成AIパフォーマンスレポート)。指名検索の増減から間接的に推測する方法にとどまります。

指名検索が増えていればAI検索の効果と考えてよいですか

そのままでは言えません。広告・PR・季節性・競合動向などの交絡要因を確認したうえで、「可能性が高い」という相関の言い方にとどめてください。

GA4のAI AssistantチャネルでAI検索の効果は分かりますか

外部の生成AIサービス経由の流入は分かります。ただしGoogleのAI Overviews・AIモード経由の流入はOrganic Search扱いで対象外です(出典: デフォルトチャネルグループの定義)。詳しくは『GA4のAI Assistantチャネル新設、見落としやすい分類の穴』を参照してください。

指名検索が使えないケースはありますか

ブランド名が一般語や地名と重なる場合や、検索ボリュームが極端に小さい場合は、ノイズと実際の変化を区別できません。

指名検索データはどれくらいの頻度で確認すればよいですか

月次では変動が大きいため、複数月・前年同月比で継続して観察することをおすすめします。単月の増減だけで判断しないでください。