サードパーティcookieは、もう終わった話だと思っていませんか。Chromeは2026年8月時点でも、サードパーティcookieを既定ではブロックしていません。一方でSafari・Firefoxは、既にデフォルトでブロックしています。この違いを取り違えたまま計測設計を進めると、前提そのものがずれます。
この記事で分かること
- Googleが2024年4月に発表したのは「延期」であり、「撤回」ではないこと
- 2024年7月に一度、廃止をやめてユーザー選択式のプロンプト方式へ転換すると発表されたこと
- そのプロンプト方式自体も2025年4月22日に断念され、サードパーティcookieを廃止しない方針が確定した経緯
- 同年10月17日には、代替候補とされていたPrivacy Sandbox関連API群10件が非推奨化されたこと(出典: Privacy Sandbox公式・2025-10-17公開)
検証環境:Privacy Sandbox公式サイト本文・WebKit公式・Mozilla公式ブログの直接確認/2026-08-08確認。
01サードパーティcookieを巡って何が起きたのか|3段階の発表を整理
2024年4月23日、Googleは方針転換したと発表しました(出典: Google Privacy Sandbox公式ブログ・2024-04-23公開)。内容は、サードパーティcookie廃止を2024年第4四半期中に完了する計画の断念です。この発表は「延期」であり、廃止計画そのものの撤回ではありません。英国の競争市場庁(CMA)・情報コミッショナー事務局(ICO)との協議継続を条件に、当時は2025年早期の廃止開始を見込むとしていました。
2024年7月22日、方針はさらに一段階進みました。Googleは同ブログでこれまでとは違う内容を発表しました(出典: Google Privacy Sandbox公式ブログ・2024-07-22公開)。サードパーティcookieの廃止そのものを取りやめ、ユーザーが選べる新しい体験をChromeに導入するという内容です。発表者はAnthony Chavez氏(Privacy Sandbox担当VP)です。
そのプロンプト方式も長くは続きませんでした。2025年4月22日、同じくChavez氏が3回目の方針転換をすると発表しました(出典: Google Privacy Sandbox公式ブログ・2025-04-22公開)。新しい独立プロンプトの導入自体を見送り、既存のChromeプライバシー設定での運用を維持するという内容です。これにより、サードパーティcookieを廃止しない方針が確定しています。
| 発表日 | 発表内容 | 一次情報 |
|---|---|---|
| 2024-04-23 | 2024年第4四半期完了を断念し延期を発表(撤回ではない) | Privacy Sandbox公式 |
| 2024-07-22 | 廃止そのものをやめ、選択式プロンプト方式へ転換すると発表 | Privacy Sandbox公式 |
| 2025-04-22 | プロンプト方式の導入も断念し、現行方式の維持を発表 | Privacy Sandbox公式 |
02サードパーティcookieの方針転換|何が変わったのか
この3段階は、単なる延期の繰り返しではありません。2024年4月は「いつ廃止するか」というスケジュールの変更でした。これに対し2024年7月は「廃止するかどうか」という方針そのものの転換で、cookieを残したままユーザーに選ばせる設計へ切り替わっています。
2025年4月の発表は、その「選ばせる設計」自体を実装しないという決定です。Googleが挙げた主な理由は次の4点です(出典: Google Privacy Sandbox公式ブログ・2025-04-22公開)。
- パブリッシャー・開発者・規制当局・広告業界の間で見解が分かれたままだったこと
- 2019年のPrivacy Sandbox構想発表以降、プライバシー保護技術の採用が進んだこと
- AIを活用したブラウジング保護の新しい選択肢が登場したこと
- 世界的な規制環境が大きく変化したこと
ユーザーは引き続き、Chromeの「プライバシーとセキュリティ」設定からサードパーティcookieの扱いを選べます。ただしGoogleの表現は「現行アプローチの維持」であり、将来また変更しないと約束したものではありません。
Chromeが方針を3回変える間、他の主要ブラウザは動いていません。
Safariの開発チームは、WebKit公式サイトで既定ブロックの方針を明記しています(出典: WebKit公式(Safari開発チーム))。原文では、例外なくサードパーティcookieを既定でブロックすると説明されています。
Firefoxも2019年9月3日、Mozilla公式ブログで既定ブロックを開始したと発表しました(出典: Mozilla公式ブログ・2019-09-03公開)。デスクトップ版・Android版ともに、サードパーティのトラッキングcookieを既定でブロックするという内容です。
主要ブラウザのうちサードパーティcookieを既定で許可しているのはChromeだけという状態が、2026年8月時点でも続いています。
03サードパーティcookieの代替技術|2025年10月、API群が非推奨化された
3段階の方針転換が固まった後も、動きは止まっていません。2025年10月17日、Googleは新たな発表をしました(出典: Privacy Sandbox公式・2025-10-17公開)。対象はサードパーティcookieそのものではなく、cookieの代替候補として設計されていたPrivacy Sandbox関連の技術群です。
対象は10件です(出典: 同上)。Chrome・Androidそれぞれの手順に沿って、次の技術が段階的に廃止されます。
- Attribution Reporting API(Chrome・Android)
- IP Protection
- On-Device Personalization
- Private Aggregation(Shared Storageを含む)
- Protected Audience(Chrome・Android)
- Protected App Signals
- Related Website Sets(requestStorageAccessFor・Related Website Partitionを含む)
- SelectURL
- SDK Runtime
- Topics(Chrome・Android)
理由としてGoogleは、導入率の低さと、エコシステムから寄せられた期待価値に関するフィードバックを挙げています(出典: 同上)。
一方でCHIPS・FedCM・プライベートステートトークンの3つは、この非推奨化の対象に含まれていません。Googleはこの3つを引き続きサポートすると明記しています(出典: 同上)。
この発表は、サードパーティcookieを廃止しないという結論を覆すものではありません。廃止しない方針は2025年4月22日時点で既に確定しており、10月の発表はそれとは別の対象、つまり代替技術側についてのものです。ただし「cookie廃止に備えて代替APIへ移行しておく」という設計を進めていた場合、移行先そのものが縮小することになるため、影響は無視できません。
04サードパーティcookieの代替候補|非推奨化されなかった3件と相互運用アトリビューション標準
Googleは2025年10月17日、10件の技術を非推奨化すると発表しました(出典: Privacy Sandbox公式・2025-10-17公開)。一方で3つの技術は、引き続きサポートすると明記されています(出典: 同上)。非推奨化されたのは代替候補側の技術であり、この3件は対象に含まれません。
CHIPS(Partitioned Cookies)は、Cookieをサイトごとにパーティション化して保存する仕組みです。FedCM(Federated Credential Management API)は、プライバシーを保護したままID連携を行うAPIです。Private State Tokensは不正行為の軽減に使う仕組みで、Googleは追加のアプローチも検討すると述べています(出典: 同上)。
この3件は他のブラウザでも使われるなど幅広く普及している点が、継続の理由として挙げられています(出典: 同上)。
| 技術 | 用途 | 2025-10-17時点の扱い |
|---|---|---|
| CHIPS(Partitioned Cookies) | Cookieのパーティション化保存 | 継続サポート |
| FedCM | プライバシー保護型のID連携 | 継続サポート |
| Private State Tokens | 不正行為の軽減 | 継続サポート・追加アプローチも検討 |
| Attribution Reporting API | 広告効果測定(コンバージョン計測) | 非推奨化(対象10件の1つ) |
| Topics API | 興味関心ベースの広告ターゲティング代替 | 非推奨化(対象10件の1つ) |
非推奨化される10件のうち、Attribution Reporting APIには受け皿の方向性も示されています。Googleは相互運用可能なアトリビューション標準の策定を進める方針です。この標準策定にはW3CのPrivate Advertising Technology Working Groupを活用します(出典: 同上)。Attribution Reporting APIを計測設計に組み込んでいた場合、廃止後の移行先はこの標準化の進み具合に左右されます。
05サードパーティcookie計測への実務インパクト
「Chromeが廃止しないなら、cookieless対応は不要」と考えるのは早計です。Safari・Firefoxは既に既定でブロックしています。そのためサードパーティcookie前提のリターゲティング広告やクロスサイト計測は、この2ブラウザ分について既に精度が低下した状態が続いています。
また、Googleの発表文言はあくまで「現行アプローチの維持」です(出典: Google Privacy Sandbox公式ブログ・2025-04-22公開)。廃止しないと恒久的に約束したわけではありません。「Chromeの3PC廃止に合わせて◯年までに移行を終える」という社内スケジュールが残っているなら、その前提自体を見直す必要があります。
Attribution Reporting APIを軸にコンバージョン計測の移行を進めていた場合も、今すぐ設計を作り直す必要はありません。Googleは相互運用可能なアトリビューション標準を、W3Cで策定していく方針です(出典: Privacy Sandbox公式・2025-10-17公開)。個別に代替APIを探すより、標準化の進捗を追うほうが実務上の手戻りは少なくなります。
06いま、サードパーティcookie前提の計測設計で何をすべきか
Chromeの発表を正しく理解したうえで、次の4点を確認してください。
- Chromeのサードパーティcookie廃止を前提にした「◯年までに移行完了」という社内スケジュールが残っていないか確認する
- Safari・Firefoxは既に既定でブロックしているため、サードパーティcookie依存の計測は既にこの2ブラウザ分の精度低下が起きている前提で評価する
- Googleの「現行アプローチの維持」は将来の再変更を排除していないため、cookieless対応の技術投資は止めない
- Privacy Sandbox公式ブログを定期的に確認し、方針転換の有無を追い続ける(本記事も四半期ごとに内容を見直します)
- cookieの代替として採用を検討していたPrivacy Sandbox関連APIがある場合、2025年10月17日の非推奨化対象10件(出典: Privacy Sandbox公式)に含まれていないか確認する
07FAQ
Chromeのサードパーティcookieは結局廃止されたのですか
廃止されていません。2025年4月22日にGoogleが廃止しない方針を確定したことは、前章で解説した通りです。
2024年4月の発表は「撤回」だったのですか
いいえ、正確には「延期」の発表です。2024年第4四半期中の完全廃止を断念しただけで、撤回ではありません。
サードパーティcookieを使う計測はもう対応不要ですか
いいえ、対応は必要です。Safari・Firefoxは既に既定でブロックしているため、複数ブラウザを前提にした計測設計は引き続き求められます。
SafariやFirefoxのサードパーティcookie対応はどうなっていますか
両ブラウザとも既定でブロックしています。Firefoxは2019年9月3日、Safariも現在既定でブロックしていることは前章で解説した通りです。
サードパーティcookieを巡る方針は今後また変わる可能性がありますか
否定はできません。Googleの発表文言は「現行アプローチの維持」であり、将来の再変更を排除する表現ではないためです。
2025年10月の発表で、cookie廃止の結論は変わりましたか
変わっていません。2025年10月17日の発表は、代替候補だったAPI群10件の非推奨化です(出典: Privacy Sandbox公式・2025-10-17公開)。サードパーティcookieを廃止しないという2025年4月22日の結論はそのままです。ただし、代替技術側への移行を前提にした設計は影響を受けます。