01結論:AI Overviewsで検索クリックはどれだけ落ちるか、先に言うと

AI Overviewsが検索結果に出ると、下にあるリンクは以前より押されにくくなります。これは複数の独立した調査が共通して示している事実です。ただし「どれだけ落ちるか」という数字には、8%から38%まで幅があります。(出典: Pew Research CenterSearch Engine Journal)。

この記事では、Pew・ランダム化比較実験・Ahrefs・SparkToroという4つの一次データを比較します。対象国・計測期間・サンプル・手法をそろえて読み解きます。数字を1つだけ覚えて終わりにしないでください。

この記事で分かることは次の3点です。

  • Pew・RCT・Ahrefs・SparkToroの4つの一次データが、それぞれ何を測っているか
  • 4つの数値を単純平均・単純比較してはいけない理由
  • 自社のGoogle Search Consoleで何を確認すればよいか

検証環境:Pew・RCT(ISB×CMU)・Ahrefs・SparkToroの一次データ4つを2026-08-07にアーカイブ確認しています。

AI Overviews関連の一次データ4件、代表指標の比較 Pew Research Center、ランダム化比較実験、Ahrefs、SparkToro/Similarwebという4つの一次データそれぞれの対象国・手法・代表的な数値をカード形式で比較する図。数値は調査ごとに測定方法が異なるため単純比較・単純平均はできないことを示す。 AI Overviews関連 一次データ4件の代表指標 条件が異なるため数値の単純比較・単純平均はできない Pew Research Center 8% / 15% 表示時/非表示時のクリック率 行動ログの実測・米国2025年3月 ランダム化比較実験 -38% 表示時のオーガニッククリック RCT無作為割当・米国2026年1〜2月 Ahrefs -34.5% ポジション1CTRの低下(予測値比) GSC集計・米国2024→2025年3月 SparkToro/Similarweb 68.01% ゼロクリック検索の割合 クリックストリーム集計・米国2026年
AI Overviews関連の一次データ4つ、代表指標の比較

024つの一次データが測っている条件を並べる

AI Overviewsの影響を測った調査は、実は「何を」「どうやって」測ったかがそれぞれ違います。対象国・計測期間・サンプル数・手法をそろえずに数字だけを比べると、誤読が生まれます。まず4つの調査の前提条件を並べます。

調査対象国計測期間サンプル手法
Pew Research Center米国2025年3月成人900人・検索68,879件ブラウジング行動ログの実測
ランダム化比較実験(ISB×CMU)米国(デスクトップ)2026年1月〜2月Chromeユーザー1,065人Chrome拡張機能による無作為割当
Ahrefs米国(デスクトップ)2024年3月と2025年3月の比較informational KW 30万件Google Search Consoleデータの集計
SparkToro/Similarweb米国2026年1月〜4月クリックストリームパネルクリックストリームデータの集計

4件の出典は次のとおりです。

  • Pew Research Centerの実測調査(出典: Pew Research Center・2025年3月・n=900)
  • インド経営大学院とカーネギーメロン大学による調査(出典: Search Engine Journalが報じたランダム化比較実験・2026年1月〜2月・n=1,065)
  • Ahrefsの調査(出典: Ahrefsの分析・2024年3月と2025年3月の比較・n=30万キーワード)
  • SparkToro/Similarwebの調査(出典: Search Engine Landが報じた共同調査・2026年1月〜4月)

4つとも米国データである点は共通しています。日本市場での実測ではないため、この記事のどの数字も「日本でもそうなる」という根拠には使えません。

03Pew Research Centerの実測、AI Overviews表示時のクリック率は8%だった

Pew Research Centerの実測調査によると、米国成人900人のブラウジング行動ログを直接収集して分析しています。(出典: Pew Research Center・2025年3月・n=900)。対象となった検索68,879件のうち、AI Overviewsが生成されたのは12,593件で、全体の18%です。

従来の検索結果リンクをクリックした割合は、AI Overviewsが表示された訪問で8%、表示されなかった訪問で15%でした。AI Overviews内のリンクをクリックした割合は1%未満にとどまっています。

AI Overviewsが表示されたページを訪問したあとにセッションを終了した割合は26%です。表示されなかった場合の16%より10ポイント高くなっています。

この調査はGoogleの通常検索が対象で、Bingなど他の検索エンジンは技術的な制約により対象外です。米国のパネル調査であるため、日本の検索ユーザーの行動には直接あてはまりません。

04ランダム化比較実験が示す、AI Overviews表示時のオーガニッククリック38%減

インド経営大学院とカーネギーメロン大学の研究者が、米国のデスクトップChromeユーザー1,065人を対象にランダム化比較実験を実施しました。(出典: Search Engine Journalが報じた研究・2026年1月〜2月・n=1,065)。Chrome拡張機能を使い、対照群・AI Overviews非表示群・AI Mode群の3群に無作為に割り当てています。

参加者ごとに2週間データを取得し、AI Overviewsが表示されたクエリではオーガニッククリックが38%減少しました。AI Overviewsを非表示にすると、1検索あたりの外部クリックは0.38件から0.61件に増加しています。

この研究はAEA(米国経済学会)の事前登録レジストリに登録されていますが、論文はSSRN上のドラフトで査読前です。相関ではなく因果関係に踏み込める設計である一方、確定した学術的知見として断定はできません。

対象は米国デスクトップのChromeユーザーに限られます。モバイル環境や日本市場の数値として読み替えることはできません。

05AhrefsのGSC集計で見る、ポジション1CTRの1年比較

Ahrefsは、informational intentのキーワード30万件のGoogle Search Consoleデータを集計しました。(出典: Ahrefsの調査・2024年3月と2025年3月の比較・n=30万キーワード)。うちAI Overviews表示ありが15万件、表示なしが15万件です。

デスクトップ環境限定の月次CTRを、2024年3月(AI Overviews展開前)と2025年3月(展開後)で比較しています。検索結果ポジション1のCTRは、AI Overviews表示ありのキーワードで7.3%から2.6%へ低下しました。

AI Overviewsが無い場合の予測CTR4.0%と実際のCTRを比べると、約34.5%低いという計算です。この34.5%という数値が、記事タイトルにも使われている代表値です。

この数値は、あくまで情報検索意図・デスクトップ限定という条件下の集計値です。商業検索やモバイルでの傾向は対象外で、個々のサイトごとのばらつきは集計データからは見えません。

06SparkToro/Similarwebが見る、AI Overviewsとゼロクリック検索の関係

SparkToroとSimilarwebは、米国のクリックストリームパネルデータをもとに、ゼロクリック検索の割合を算出しました。(出典: Search Engine Landが報じた調査・2026年1月〜4月・米国)。この期間、米国のGoogle検索の68.01%がリンククリックなしで終わっています。

2024年通年の60.45%と比べると7.56ポイントの増加です。同記事は、AI Overviewsの表示によってCTRが約60%低下し、AI Overviewsは検索全体の20%超に表示されていると伝えています。

この数値は米国市場に限定されており、日本市場への単純な当てはめはできません。2024年と2026年でデータプロバイダー側の算出方法が変わっている可能性もあり、単純な時系列比較には注意が必要だとSearch Engine Land自身も述べています。

AI Overviews関連調査、測定方法の位置づけ Pew Research Center、ランダム化比較実験、Ahrefs、SparkToro/Similarwebの4つの調査を、横軸に観察研究からランダム化比較実験まで、縦軸に集計データから個人単位ログまでという2つの軸で位置づけた図。同じ現象でも測定方法が違うため数値の意味が異なることを示す。 4つの調査を「何をどう測ったか」で位置づける 個人単位のログ 集計されたデータ 観察研究 ランダム化比較実験 Pew Research Center 行動ログ・観察 ランダム化比較実験 Chrome拡張・無作為割当 Ahrefs GSC集計・観察 SparkToro/Similarweb クリックストリーム集計・観察 右に行くほど因果関係を主張しやすく、上に行くほど個人の行動が見える
AI Overviews関連調査、測定方法の位置づけ

07なぜ数値が食い違うのか、AI Overviews調査4本の測定軸をそろえる

ここまでの4つの数値は、8%と15%、38%減、34.5%低下、68.01%と、見た目の形すら揃っていません。理由は、4つの調査が異なる軸で現象を測っているためです。数値ごとの出典は次のとおりです。

Pew Research Centerとランダム化比較実験は、個人単位の行動ログを見ています。一方でAhrefsとSparkToro/Similarwebは、集計されたデータを見ています。

さらに、ランダム化比較実験だけが「AI Overviewsを見せる・見せない」を無作為に割り当てた実験です。残る3つは実際に起きている検索行動を観察した調査で、相関関係は示せても因果関係の証明にはなりません。

調査ごとに、答えられる問いと答えにくい問いを整理すると次のとおりです。

調査答えられる問い答えにくい問い
Pew Research CenterAI Overviews表示の有無でクリック率がどう違うか表示が原因でクリックが減ったと言えるか
ランダム化比較実験AI Overviews表示が原因でクリックが減るか米国以外・モバイルでも同じ効果か
Ahrefsポジション1のCTRが1年でどう動いたか個々のサイトへの影響がどれくらいか
SparkToro/Similarwebゼロクリック検索の割合がどう推移したかAI Overviews単体の寄与分がどれだけか

つまり「AI OverviewsでCTRは何%落ちるか」という問い自体に、単一の正解はありません。自社の状況に近い調査条件を選んで読む必要があります。

08自社のGoogle Search Consoleで確認すべき3つのポイント

4つの一次データを読んだうえで、自社にどう当てはめるかが本題です。海外調査の数字をそのまま自社の予測値として使わないでください。まず、自社のGoogle Search Consoleで次の3点を確認します。

  1. 対象クエリを絞り込む:informational intentのクエリ(「〜とは」「〜方法」等)を検索アペンドで抽出します。Ahrefsの調査と条件をそろえるためです。
  2. 期間を区切って比較する:直近の四半期と、前年の同時期とで、掲載順位帯別のCTRを比較します。順位帯そのものが変わっていないかも確認します。
  3. 表示回数の変化を見る:該当クエリのインプレッション数が急に落ちていないか確認します。CTR低下と表示機会そのものの減少は別の現象です。
自社GSCでAI Overviewsの影響を確認する3ステップ 自社のGoogle Search Consoleでinformational intentクエリを絞り込み、期間を区切ってCTRを比較し、表示回数の変化を確認するという3ステップと、結果に応じてAI Overviewsの影響を疑うか他の要因を疑うかに分岐するフローを示す図。 自社GSCで確認する3ステップと分岐 自社のクエリ実績を確認する ①対象クエリを絞り込む informational intent(「〜とは」等) ②期間を区切って比較する 直近3ヶ月 対 1年前の同時期 ③表示回数の変化を見る インプレッション数の急落有無 CTRと表示回数、 両方動いたか No Yes 他の要因を疑う (アップデート・季節要因等) AI Overviewsの影響を疑う 出典を明示して社内共有する
自社GSCでAI Overviewsの影響を確認する3ステップ

3点とも数字が動いていれば、AI Overviewsの影響を疑う根拠になります。動いていなければ、原因は別(アルゴリズムアップデート、季節要因など)の可能性が高くなります。

09AI Overviews CTR低下データを読むときつまずきやすい点

4つの数値を読むときによくある誤読を4つ挙げます。

  • 8%・38%・34.5%・68.01%を単純平均して「平均〇%落ちる」と言ってしまう(前提条件が違うため計算に意味がありません)
  • 「ゼロクリック率」と「CTR低下率」を同じ指標として扱ってしまう(ゼロクリック率は検索結果全体の話で、CTR低下率は特定順位や特定クエリ群の話です)
  • 観察研究(Pew・Ahrefs・SparkToro)とランダム化比較実験を同列に扱い、すべてを「原因と結果」として語ってしまう
  • 米国データをそのまま「日本でも同じだけ落ちる」と一般化してしまう

4つの数値の出典: Pew Research CenterSearch Engine JournalAhrefsの分析Search Engine Land

AI Overviewsの影響を語るときは、どの調査の、どの指標の話をしているかを必ず添えてください。

10チェックリスト:AI Overviews CTR低下データを扱うときの7項目

  • どの調査(Pew/RCT/Ahrefs/SparkToro)の数値かを明記しているか
  • 対象国・計測期間・サンプル数を数値と一緒に書いているか
  • 「クリック率」「CTR」「ゼロクリック率」を混同せず使い分けているか
  • 米国データを「日本でも同じ」と一般化していないか
  • 自社のクエリがinformational intentかどうかを確認したか
  • 自社GSCでAI Overviews表示前後の期間を区切って比較したか
  • 観察研究(相関)とランダム化比較実験(因果)を区別して説明しているか

11FAQ

AI OverviewsのCTR低下率は、結局何%が正しいのですか

Pew Research Centerの実測では、AI Overviews表示時のクリック率が8%でした(非表示時は15%)。Ahrefsの集計ではポジション1のCTRが34.5%低下し、ランダム化比較実験ではオーガニッククリックが38%減少しています。出典: Pew Research CenterAhrefsの分析Search Engine Journal。どの数字を使うかは、自社の状況(クエリの種類・順位帯・国)に近い調査を選ぶ必要があります。

なぜAhrefsとSparkToro/SimilarwebでAI Overviewsの影響度の数値が違うのですか

測っている対象が違うためです。Ahrefsは情報検索意図キーワードのポジション1CTRという狭い範囲を、SparkToro/Similarwebは検索全体のゼロクリック率という広い範囲を集計しています。

日本のサイトでもAI Overviewsによって同じだけCTRが下がりますか

この記事で扱った4つの調査はすべて米国データで、日本市場での実測ではありません。日本語検索でのAI Overviews表示率や検索ユーザーの行動は異なる可能性があり、同じ下落幅になるとは限りません。自社のGSCデータで確認することをおすすめします。

AI OverviewsのCTR低下と検索順位の下落は同じ現象ですか

別の現象です。CTR低下は、順位が変わらなくてもクリックされる割合が下がる現象です。順位下落は、AI Overviewsが検索結果内の表示位置を実質的に押し下げることで起きる、別の要因です。

ランダム化比較実験(RCT)の数値は、観察研究の数値よりどう信頼できるのですか

RCTはAI Overviewsの表示・非表示を無作為に割り当てるため、原因と結果の関係を主張しやすい設計です。ただし今回のRCTは査読前のドラフト論文で、米国デスクトップのChromeユーザーという限られたサンプルである点には注意が必要です。

自社サイトへの影響を確かめるには、GSCの何を見ればいいですか

informational intentのクエリを絞り込み、直近の四半期と前年の同時期とでポジション別CTRとインプレッション数を比較してください。両方が同時に動いていれば、AI Overviewsの影響を疑う根拠になります。